「おはよう、あかり。今日一限目マラソンに変わったらしいよ。先週は雨でできなかったからって」
学校に着くなり、美保が文句を言いながら机の側に来てくれた。
「えーマラソン? 最悪じゃん」
「ね。雨戻ってこいって感じだよね」
そう言いながらも美保は足速いし、運動神経がいいから羨ましい。私は持久力もないし、そもそも体を動かすのが得意じゃないので、マラソンは地獄だ。
「ってか、またピアス開けた?」
走るためにポニーテールに結んでいる彼女の耳には、見慣れないピンクのピアスが見える。
「うん。昨日の夜にね。まだファスピで穴が安定するまでは可愛いの付けられないけど。あかりさ、そろそろ覚悟決めて開けなよ」
「えーだって痛そうだし」
「全然痛くないし、開けるのなんて一瞬だよ。ピアスもおそろいで付けたいし?」
「うーん、でもさ」
私は歯切れの悪い返事を繰り返す。
基本的に針とか包丁とか尖ったものが苦手だし、血も見るだけで貧血を起こす。だから皮膚に穴を開けることを想像しただけで、背中がぞわりとしてしまう。
「もお! あかりは変なところに臆病なんだから! じゃあ、ピアスじゃなくていいから、今度一緒のものを買いに行こう」
「うん、それならオッケー」
美保はオシャレだし可愛いし、自慢の友達だ。性格も明るく、人懐っこいから、徐々に交流関係の幅を広げて今ではクラスの中心人物になりつつある。