「相変わらずお人好しなやつ」
蒼井の元に戻ると、間髪いれずにそう言われた。でもこれは嫌味じゃない。きっと褒めてくれてるんだってわかってる。
「蒼井は、なにか変われた?」
「まあ、親父にも言いたいことも言ったし、学校も一応卒業してーし。あとは……」
「あとは?」
「詮索してんじゃねーよ、ブス」
なんでだろう。彼の口の悪さも今では愛しく感じてしまう。
「なに? 照れてるの? 蒼井ってけっこう秘密主義だよね」
「うるせーな。一番変わったことは……」
「ことは?」
「誰かといることを覚えたくらい」
「へ?」
彼が意地悪そうな顔をしている。
誰かって、それは私?
彼の耳が、ほんのり赤くなっている。私もそれを見て一緒に顔を熱くした。
彼への気持ちは、否定しない。
それを認めるのも、ひとつの勇気だ。
「あ、あのさ……」
なにを話そう?
私たちは、なにから始めようか?
悩んだり苦しんだりすることがあっても、終わりと始まりを繰り返し、新しいなにかを探していく。
それが、私の生まれたこの世界。
私はこれからも、きみとここで生きていこう。
〔翼をなくした天使たち END〕



