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蒼井は目覚めてから脳の後遺症もなく、手足の痺れも残らなかった。しばらくは経過観察のために通院しなくてはいけないけれど、彼は今日、三カ月ぶりに学校へと登校することになった。
「あー面倒くせえ」
もう少し緊張感があってもいいはずなのに、蒼井はさっきからあくびばかりをしていてやる気がない。
「ってかさ、久しぶりの学校なんだから気合い入れなよ」
「そういう疲れることはしない主義なんで」
「明日は待ち合わせ時間に遅れないでよね。私まで遅刻することになるじゃん」
「お前、朝から小言が多すぎ」
「蒼井のせいでしょ!」
私がムキになればなるほど、彼は面白そうにしている。
蒼井がちゃんと進級できるように、私は毎朝一緒に学校に行くことを提案した。
もちろん面倒くさがられたけれど、彼が真面目なことはもう知っているので、実はそんなに心配はしていない。
「あ、そういえばずっと聞こうと思ってたんだけど、向こうの世界で蒼井はあのあとどうなってたの?」
「あー、結局押さえてたドアを壊されて、濱田の野郎に押し潰された」
「はは」
「いや、笑いごとじゃねーし」
あの瞬間のことは、ずっと胸に焼き付いている。
彼が私のために必死になってくれたこと。その姿を見たから私はあの時、足を前へと踏み出すことができたのだ。



