青の先で、きみを待つ。




「……紺野さんっ!」

と、その時。誰かに名前を呼ばれた。息を切らせて走ってきたのは市川さんだった。

私のことを探していたんだろうか。その額には汗が浮かんでいる。

「どうしたの?」

「……っ……紺野さん、ごめんなさい」

市川さんは瞳に涙をたくさん溜めて、深々と私に頭を下げた。

「私、紺野さんに助けてもらったのに従わないとまた自分がいじめられるんじゃないかって怖かったの。それで紺野さんにひどいことを言いました」

私は市川さんのことも許せないと思っていたけれど、いじめられる恐怖は理解できるし、まりえの言いなりになったことも仕方ないと思う。

それに私は彼女のことを助けたことに後悔ない。

それによって地獄の日々が始まってしまったけれど、前向きに捉えれば、それがなかったら私はあの世界へは行けなかったから。


「ずっと言えてなかったけど、私を庇ってくれてありがとう……っ」

市川さんが泣きながら、何度も繰り返した。


「顔を上げて。もう十分伝わったから」

「………紺野さん。こんなこと今さらだって呆れられるかもしれないけど、私の気持ちをあとひとつだけ言ってもいい?」

「うん、いいよ」

「私、紺野さんと友達になりたい……!」

私はわかりやすく、きょとんとする。

それは呆れたからではない。それは同じだと思ったから。あの世界で友達になろうと最初に言ってくれたのは市川さん……ううん、美保だった。

現実でもそれが叶うなんて嬉しくて、私まで涙が出てくる。


「うん、友達になろう。私も市川さんのことをたくさん知りたい」

現実の彼女とこれからどんな関係になれるのか、大切に育てていきたいものがもうひとつ増えた気分だった。