この世界で私は変わった。
叶えたいと願ったのは、この世界ではないという気持ちも認めることができた。
でも私は現実世界で、やっていけるの?
また辛くなって苦しくなって、同じことを繰り返すだけじゃないの?
すると、ドタドタと階段を駆け上がってくる音がした。
蒼井が鍵をかけようとしたけれど、錆び付いて施錠できずに、開きかけたドアをそのまま体で押さえていた。
「紺野! そこにいるんだろう? 早くドアを開けなさい!」
ドンドンドンッと濱田先生がドアを叩いている。来たのは先生だけじゃなくて、学年主任や保健室の先生。騒ぎを聞きつけた生徒たちもいることが声でわかった。
「紺野!」
「紺野さん!」
交互で名前を呼ばれてる。大人数人と蒼井じゃ勝てるわけもなくドアは半分開きかけていた。けれど、彼は必死でそれを止めている。
「蒼井もういいよ、私……」
「お前、ここで行かなかったら現実で逃げてきた自分と同じだぞ!」
「………」
「全部向こうに置いてきたんだろ? 捨ててきたんだろ? だったら取り返せ!!」
……取り……返す?
終わったと思ってたけれど、私はまだ取り返せる?
あの日々に続きがあるとしたら、私は失ったものを取り戻せるの?



