その答えにたどり着くまで、どれくらい遠回りをしてしまったんだろう。
でも大丈夫。絶対にもう、なくさない。
「え……」
と、その時。自分の体がふわりと軽くなった気がした。よく見ると、また自分の手が透けている。
いや、今回はそれだけじゃない。透明化はどんどん進んでいき、ついにそれは全身に広がっていた。
「ど、どうしよう、蒼井」
いつもすぐに近づいてきてくれるのに、彼はドアの前から動こうとはしない。それどころか手すりの向こう側を指差して、そこに立てと私に言う。
怖いから嫌だと言っても彼は怖い顔しかしなくて、私は言われるがままその場に立った。
僅かな隙間に立つ足が震えている。思わず手すりに掴まってしゃがみこんだ。
「もう、こんなところに立てとかなんなの?」
私は蒼井に向かって叫ぶ。もしかして恐怖で透明化が落ち着くと思ってる?
そんなしゃっくりが治るみたいな簡単な話じゃないよ。むしろ深呼吸してリラックスしたほうが……。
「お前は戻れ」
え、い、今なんて言った?
私の動揺とは裏腹に、彼ははっきりと同じ言葉を繰り返した。
「お前は戻るんだ」
ドクンと心臓が大きく鼓動する。



