青の先で、きみを待つ。




本当は誰にも言わないつもりだった。

この世界が泡のように消滅してしまうのは悲しいから、だったらさっきの仮説みたいに私が消えた後、またもうひとりの私が戻ってきて普通に生活していればいいなって思ってた。

けれど、それもまた私の願望に過ぎない。だからこそ、美保には本当のことを知っていてほしいのだ。


「私ね、こことすごく似ている場所で生きてたの。そこには私の理想ではない生活があって、その世界で私はひどいいじめを受けてたんだ」

「………」

「こんなことを言えば混乱させてしまうけど、美保もそこでいじめられてた。信じられないだろうけど本当のことで、そこにはここと同じ名前の人が存在してる」

私の地獄は市川さんを庇った日から始まった。

今思うと私にはなんの覚悟もなくて、もしかしたら市川さんに感謝されて、まりえも変わってくれてたら……なんて、本当に正義のヒーロー気取りだったのかもしれない。

だから感謝どころか手のひらを返して、まりえ側についた市川さんのことも私は許せなかった。

もしあの時、誰のせいにもしないで、ただただいじめを止めようとした自分を誇りに思えたら、地獄だった日々を乗り越えられたんじゃないかって思う。

「信じられないよね、ごめん。急に」

そう言うと、美保は寝ていた体を起こして、私の手を握った。