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それから数日が経って、沙織が私たちに絡んでくることもなく、橋本さんへのいじめも止まった。
きっと影口くらいは言われていると思うけれど、さすがに相手が三人もいれば厄介だと察したのかもしれない。
「ってかまずは謝れって感じじゃない?」
沙織が大人しくなったとはいえ、このままなにもなかったことにされることが美保は許せないようだ。
「私は平穏になってくれただけで十分だよ?」
「橋本さんは甘い! まじで沙織は土下座ぐらいしなきゃいけないレベルだからね」
美保と橋本さんは案外気が合うようで、すでに打ち解けている。この前も初めて三人で遊びにいったけれど、まるでずっと一緒にいたように楽しかった。
美保は私たちといるようになって、髪色を暗くした。化粧もナチュラルだし、制服もだらしなく着崩さない。
無理にうちらに合わせなくていいと伝えたけれど、これが無理をしてない私なんだと言っていた。
「あ、そういえば週末、うちに泊まりに来ない? うちの親が旅行でいないんだよね」
「私は週末に予定があるから厳しいかな」
「じゃあ、橋本さんは今度ね! あかりはどう?」
「私は暇だけど……」
少し口を濁してしまったのは、行きたくないからじゃない。
友達の家に行くのは〝まりえ〟以来だし、まだトラウマが残っているというか、泊まりにいくほどの深い関係になるのが怖いのだ。