そのあと私たちは授業をサボった。いや、教室にいられる雰囲気じゃなかったと言ったほうが正しい。
ひとまず人気のない場所がいいだろうということで、いつも私が使っている非常階段の踊り場に向かう。
「ごめん。私が間違ってた」
美保は目に涙を溜めながら、私と橋本さんに頭を下げた。
「橋本さんも今まで本当にごめんなさい」
美保はあれからやっぱりいじめはよくないと、自分なりに考え直してくれたらしい。けれど、沙織が怖くてなにも言えずに今日まで過ごしてきたことを打ち明けてくれた。
「市川さん、顔を上げて。私は市川さんになにもされてないよ?」
「そんなことない。私も立派な共犯だよ。本当に本当にごめんなさい、橋本さん……っ」
美保の肩が震えている。それだけで彼女の誠意は十分すぎるほど伝わっていた。橋本さんは美保の体に手を添える。
「私は平気だよ。謝ってくれてありがとう」
「……うう……っ」
美保は罪悪感を洗い流すように、たくさん泣いた。そして落ち着いてきた頃に、私は美保に大事なことを聞いてみた。
「完全に沙織のことを敵に回しちゃったけど、大丈夫なの?」
美保もきっと、勢いだけではない。けれど、元々沙織との関係が深かったぶん、もしかしたら私たちよりずっと美保はひどいことをされるかもしれない。
「大丈夫だよ。むしろ沙織といたくないのに笑ってるほうが大変だった。これからどうなるかわからないけど、私は今すごくスッキリしてるんだ」
美保は顔に迷いはなかった。