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その日の放課後。下校していく生徒の中に私はいた。
蒼井が話してくれたことで、去年の事件のことはわかった。けれど、なんで保坂は今回も同じことをしてきたのかな。
やり方の手口を揃えてきたということは、おそらく蒼井をまた犯人に仕立てるシナリオが練られていることは明白だ。
どうして、そこまでして蒼井に執着するんだろうか。
「さようなら」
「気を付けて帰るんだぞ」
今日の下校指導はやけに多かった。普段は交代で二人ほどしか立っていないのに、今日は校長先生まで姿を見せている。
と、その時。同じ方向に進んでいた生徒たちの足が詰まっていた。なにやら正門のほうが騒がしい。
「あれ、保坂くんじゃないか!」
教師のひとりが名前を呼んだことで、私はピクリと反応した。保坂って……まさか。
背伸びをしながら前方を確認すると、校長先生と親しげに話す彼の姿があった。
「あれって去年の生徒会長だよね?」
「本当だ! たしかすごい大学に行ったんだよな!」
「保坂先輩、やっぱりカッコいい!」
「ってか、今のうちに仲良くなってたほうがよくね? だって将来絶対有名人になってそうだし
学校始まって以来の秀才は卒業しても健在のようで、彼の周りには人だかりができていた。



