青の先で、きみを待つ。




「本当は退学になるはずだった。それを率先して言ってたのが濱田の野郎で」

「濱田先生が?」

「中卒になると将来的に大変だと擁護してくれた教師もいた中で、あいつだけが素行の悪いやつは他の生徒に影響するから早く辞めさせるべきだって。クズはずっとクズのままだからって、でかい声で主張してたよ」

……うわ、最低。

でも現実の濱田先生ならそれを平気で言える人だから怖い。

ああ、だから蒼井は先生に話しかけられた時に冷たく接して嫌いだって言ってたんだ。

そんなこと思っていても口に出すべきじゃないと彼に注意したこともあったけれど、クズ呼ばわりされたのなら、嫌いと言ってしまう気持ちもわかる。

「あれ、でも退学にならなかったんだよね?」

濡れ衣とはいえ、蒼井が犯人疑惑をかけられたことは一部の人たちを除いて知らされていなかった。

だからこそ私も、去年の事件や彼についての印象も刻まれることなく薄いままだったんだと思う。

「……うちの親父の力だ」

蒼井が小さな声で呟いた。


「あいつは教育委員会の偉いやつと知り合いだから、それで俺の処分は謹慎処分という形だけで終わった」

そういえば保坂も彼のお父さんのことについて意味深なことを言ってたっけ。

蒼井の心の奥底に家族との確執があることはなんとなく気づいていた。

けれど、彼も話したがらないし、私も家族問題がデリケートなことを知っているから、安易に聞いてはいけないと感じている部分だ。

「蒼井のお父さんって偉い人なの?」

「偉くなんかねーよ。ただ成り上がりで社長になって、他の人より財と権力を持ってるってだけ」

「ちなみに……なんの社長?」

彼は嫌そうにしながらも、会社名を教えてくれた。それは誰でも知っている有名な電子機器メーカーだった。

「俺はあいつが死ぬほど嫌いだ。俺のことを出来損ないだって言うくせに、いろんなことを勝手に揉み消して、俺に跡継ぎをさせようとしてくる。本当にあんなやつ、父親でもなんでもない」

知らなかった彼の本音。

悩みなんてなくて、強くて羨ましいって思ったこともあったけれど、そうじゃなかった。

蒼井は蒼井なりに悩みがあるし、きっと色々な葛藤があったんだと知った。