「お前の言うとおり、去年の事件の犯人は保坂たちだ。正確には保坂が指示して他校の連中にやらせた」
蒼井は守っていた虚勢が崩れたように、ゆっくりと真実を語ってくれた。
「それならなんで蒼井が処分を受けたの?」
「元々、俺は保坂に目をつけられてた。それで落書きしたスプレーと盗んだ財布を全部俺のカバンに入れて犯人に仕立てあげられたんだよ」
「なにそれ、ひどい……。でも蒼井は潔白なわけだし、その時にちゃんと訴えればどうにかなったんじゃないの?」
「言ったよ。すぐに職員室に呼ばれたから俺はやってねーって。んで、保坂が裏で不良とつるんでるのは知ってたし、多分あいつらだってことも話した。でも信じてもらえなかった。教師も校長もみんな保坂がそんなことするはずないって。だから嘘を付くなって逆に責め立てられたよ」
彼は当時を思い出すような遠い目をしていた。
きっとすごく悔しかったはずだ。聞いてる私だって歯がゆいくらいに悔しくてたまらない。
「そのあとはひとまず処分保留にされて。ムカついて保坂のところに文句を言いに行ったけど、あいつはニヤついた顔でしらばっくれてた。それで思わず手が出そうになったところをまた教師に見つかって引き戻されたってわけだ」
「………」
「まあ、今考えればそれもあいつの計算だったと思うけど」
「それで謹慎処分になったの?」
それを聞くと蒼井は苦い顔をしながら、首を横に振った。



