青の先で、きみを待つ。





「私は、蒼井に話したくないことも隠しておきたかったことも全部言葉にしたよ。それで心が軽くなったし、気づいたことだってたくさんある」

「………」

「関係ないとか言わないでよ。自分のことをどうでもいいとか思わないでよ」

たしかにここは彼の言うとおり現実世界ではないし、ここでいくら必死になっても、それはなんの意味もないことなのかもしれない。でも……。


「私たちはもう色んなものを失ってるじゃん。だったら、ひとつぐらい取り戻してもいいんじゃないの?」

自分の心を救えるのは、自分だけ。

理想としていたこと、思い描いていたこと。そんな希望溢れる未来は、屋上から飛び降りたあの瞬間に、一緒になって空の彼方へと飛び散った。

だったら私たち、怖いことなんてなにもないんじゃないの?

本当は私たち、誰よりも無敵なんじゃないのかな。


「逃げないでよ、蒼井翔也。あんたが背負ってるものを私も一緒に背負うから。あんたもひとりだなんて思わないでよ、バカ!」

気づくと、ぼろぼろと涙が流れていた。そんな私のことをビー玉みたいな瞳で彼がじっと見ている。

「ブスな顔」

「泣いてなくても私はブスだよ」

「はは」

「ちょ、そこは否定してよ」

くく、と彼が肩を震わせたあと、その長い指先が私の頬に触れた。私の涙を掬うようになぞられた感触がくすぐったくて、恥ずかしくて、熱かった。

「お前ってさ、たまに物凄いやつなんじゃないかって思う時があるよ」

彼の表情が柔らかい。じっと見られ過ぎて逆に今度は私が目を逸らしたいほどだった。