青の先で、きみを待つ。




廊下に始業のチャイムが鳴り響く。私の足は教室ではなく、蒼井を探すために歩き回っていた。

「今どこにいるの? 学校に来てる?」

右手に持っているスマホは彼と繋がっている。

『……はあ、なんか用?』

昨日のことを引きずっているのか、明らかに声が不機嫌だった。

「聞きたいことがあるの。今どこ?」

『………』

「どこ?」

『体育館裏』

「わかった!」

私はすぐに電話を切って駆け出した。

体育館裏は虫が多くて苦手だけれど、授業をサボるには絶好の場所といっていいほど死角だらけだ。

顔を覗かせないとわからないほどの藪の先に彼はいた。足音で私が来たことには気づいてるはずなのに、視線はずっとスマホに向いている。

「さっき聞いたんだけど蒼井って昨日いた保坂って人と揉めたことがあるんだってね」

揉めたというより保坂に殴りかかろうとした蒼井のことを先生たちが止めたらしい。けれど、どうしてそんなことをしたのかはいくら聞いても答えなかったそうだ。

「一年前に起きた事件と関係があるんじゃないの?」

今回と同じ手口の事件があったこと。蒼井が犯人ということで謹慎処分を受けたこと。そして保坂に殴りかかったこと。それらは同時期に起きていて、私の予想ではすべてが繋がっていると思っている。

「また探偵ごっこかよ。詮索すんなって言ってんじゃん。放っとけよ。俺のことなんて」

「……ガキ」

「あ?」

「あんたって大人ぶってるけど、超ガキだよ。人には偉そうなことばっかり言うくせに、自分のことになると放っとけとかどうでもいいとか、そんなの結局嫌なことから目を背けてるだけでしょ?」

私だって、なんで蒼井のことでこんなにも熱くならなきゃいけないのって思うよ。

でもさ、私の背中を押しておいて、苦しい時に優しくしておいて、私になにもさせてくれないっていうのは違うんじゃないの?