え、ま、まさか人がいる?
動揺してる心臓の音が伝わりやすいのは私が下着姿だからだろう。慌ててYシャツを手に取ったけれど、それを着る暇もなくパーテーションで区切られていた空間の向こうから、人の頭が見えた。
たしかあそこは相談室になっていて、ソファが置かれている。ベッドに誰もいないことは確認したけれど、まさかソファのほうにいたなんて気づけなかった。
「あ、お前……」
最初に声を出したのは彼のほう。ソファに座っていたのか寝転んでいたのかはわからないけれど、立ち上がった背丈はやっぱりとても大きかった。
「……っ」
それは、紛れもない今朝の不審な男の子だった。まさかこんなところで会うとは思っていなくて、驚きのあまり脱いだジャージを彼に向けて投げていた。
「へ、変態!」
美保が言っていた一組の人かどうかは知らないけれど、状況は今朝より最悪だ。
「は? てめえが後から来たんだろ」
彼はまた私のことを睨んできて、投げたジャージを逆に投げ返してきた。それは見事なコントロールで私の顔へと命中した。



