青の先で、きみを待つ。




学校に着くと、正門で登校指導をしていた濱田先生に呼び止められた。生徒たちの波を避けて落ち着いた場所へと足を進める。

先生は私に頭を下げた。

「紺野、すまん。アンケートのことだけど先生の書き方が悪かったのか、ほとんどの生徒がいじめを目撃したことすらないと答えていたよ」

私はしっかりと、沙織たちの名前を書いたので、誰が加害者で、誰が被害者なのか、先生もわかっている。けれど、デリケートなことゆえに証拠がないと、なかなか踏み込んだことはできないのだと思う。

「きっとああいうアンケートは、自宅に一旦持ち帰らせて後日提出させたほうがよかったと思います」

教室では誰が目を光らせてるかわからないし、みんな沙織のことが怖いので、書きたくても書けなかった人もいるだろう。

「そ、そうか……そうだよな」

先生は反省したように、眉を下げていた。

私がいじめのことを相談してからは先生はクラスメイトのことを注意深く見てくれているし、仲間外れができやすい班行動は事態が落ち着くまでしないようにしてくれている。

「先生」

「ん?」

私は現実世界で、濱田先生のことが大嫌いだった。

淡々と授業をこなすだけで生徒に感心はなく、給料以外のことはまったくしようともしない。だからクラスにいじめがあるとわかっていても、先生はなにもしてくれなかった。

私がいじめられていた時だって、先生は気づいていないふりをしていただけだった。

助けてくれるはずの大人が頼りにならなくて私はすべてを諦めてしまったけれど、もしこんなふうに生徒のことを本気で考えてくれる先生に会ってたら、なにかが変わってたかもしれないと思わずにはいられない。

「いじめは絶対許してはダメです。なので、これからもちゃんと生徒のことを見続けてください」

現実で言いたかったことを言うと、先生は強く頷いてくれた。