「じゃあ、蒼井は私のせいで死んだの?」
「死んだと断言はできねーだろ。俺たちはこうして喋ってるわけだし、体は痛みだって感じる。ただの夢の中っていう、簡単な世界じゃねーだろ、ここは」
この世界の理屈はわからない。天気も変わるし、日付も進んでいくし、時間もある。
たしか、私が飛び降りたあの日は曇り空で、西の方角に雨雲が浮いていた。それで、工事現場の足場に止まってるカラスと目が合って、それが最後に私が見た景色だった。
「私のことなんて……助けようとしなくてよかったのに」
私は死にたかった。
終わりにしたかった。
それなのに私はまだ私でいる。
肉体も心もそのままで、こんなの私が望んだ結末じゃない。
「ねえ、もし死んでなかったらどうするの? 元の世界に戻るの? 蒼井はそれを望んでるんでしょ?」
彼がどんな現実を生きていたかは知らないけれど、私よりはマシなはず。
元の世界に戻っても蒼井は平気かもしれないけれど、私には無理。考えただけで、ドクドクと血の気がひいていく。
「本当に死にたかったわけじゃないくせに」
蒼井のその一言で、プツリとなにかが切れた。



