翌日も市川さんへのいじりは続いた。

耳の形がおかしいとか、くしゃみがウケるとか、まるで博物館の置物のようにみんなが市川さんの〝何か゛を探した。 

『あーあ、なにやってんの?』

ガチャンと音がしたと思えば、市川さんが転んでいた。床には彼女が持っていたペンケースの中身が散らばっている。それを黙々と拾っている様子を、まりえが冷めた目で見ていた。

……今、わざとまりえが足を引っ掻けた?

思い過ごしならいいけど……と思いながらも、心に芽生えていた悪い予感は当たってしまった。

なんと、次の日もまた次の日も市川さんは嫌がらせをされていた。次第に悪ノリに参加することに飽きてしまった人もいる中で、まりえを含む一部の女子たちだけが継続して市川さんにひどいことをしていた。

最初は机に落書きをしたり、ノートを一枚だけ破ったりと、小さなことだった。

でもそれは日に日にエスカレートしていき、最近では市川さんのことを体育倉庫に閉じ込めたり、トイレの水をかけたり、恥ずかしい写真を撮って脅したりもしている。

この頃から少しずつまりえの交流関係も変わりつつあり、素行が悪いとされている人とも仲よくするようになっていた。

そのせいもあってまりえ自身も髪色を金髪にしたり、ピアスの穴も遊び半分で増やしたりしていて、そんな彼女の変化に私は付いていけなかった。

まりえは心の優しい子だったのに、最近では人相も悪くなってきている。

以前のまりえに戻ってほしい。

だからこそ、市川さんへのいじり、いや、もはやいじめになっているこの状況を止めなくてはいけないと思った。