店員のふっくらとした体型のおばさんにお金を払って射的用のおもちゃの鉄砲受け取った。
 400円で、三回撃てるらしい。
 どうせなら、狙うのは一番大きなのが良いよね!
 一番上の、中央に置かれたくまの人形に銃口を向ける。
 魁吏くんは何も言わずに、私の後ろで腕組みして見守ってくれている。
 魁吏くん、射的しなくていいのかな?
 まあ、本人がやりたいって言わないしいっか。
 射的なんて、するのは初めてだからコツとかはよくわかってないけど、とりあえず撃ってみよ!
 一発目。
 引き金を引かれた銃から勢いよく飛び出したコルクの玉は、そのまま真っすぐに人形の右斜上を通過した。
 はずしちゃった。
 残りのチャンスは二回。
 いったん深呼吸を挟んで、もう一度銃を構え直す。
 さっきよりも左下を意識して・・・えいっ。
 「あっ」
 ちゃんと一回目よりも左下めがけて撃ったはずなのに、コルクは見当違いの方向に飛んでいく。
 むしろ、景品からさらに外れてしまった気がする。
 これだけ狙った軌道から逸れるなんて、私には劇的に射的のセンスが無いらしい。
 ちょっとだけ自信喪失。
 でも、せっかくだしあのくまの人形は倒して持って帰りたい。
 「・・・・・・よし!」
 再び意気込んで構えると、後ろから何かにふわりと包み込まれた。
 銃を握る私の手には、ゴツゴツとした男の人らしい手が重ねられる。
 「・・・・・・え?ちょ、魁吏くん!?」
 数秒かけて事態を把握した私は、驚きの声をあげてしまう。
 周りの人からも、黄色い歓声が起こった。
 重ねられた手から、直に魁吏くんの体温が伝わってくる。
 「魁吏くん、近いよ!?」
 「黙ってろ」
 「あ、はい」
 流れるように素直に返事してしまった。
 そのまま魁吏くんは狙いを定めて・・・ぽんっ。
 「あっ!」
 射的の玉は、見事くまの人形に命中。
 倒れたくまの人形を、店員のおばさんが手渡してくれる。
 魁吏くんすごい!
 一発で当てちゃうなんて!
 「魁吏くん、ありがとう!」
 ・・・・・・あれ、でも。
 わざわざ、後ろから私に覆いかぶさるようにして撃つ必要はなかったんじゃ・・・?
 というか、普通に撃ったほうが狙いやすくない?
 「魁吏くん、なんであの撃ち方したの・・・?」
 思ったことを訊いてみる。
 「黙ってろ」
 「あ、はい」
 数秒前と一言一句同じ会話を繰り返す。