「これから、どうするの?」
 花火が始まるまで、あと一時間くらいある。
 だから、ずっとここで座っているのはなんだかもったいないし。
 かといって、無人の状態にしてしまって置き引きとかの被害にあいたくない。
 花火大会で、そんなことには絶対になりたくない。
 「う〜ん・・・。あっ、そうだ。ペア作って20分交代でここで待機するっていうのはどう?」
 「いいね」
 里穂の提案で、早速ペアづくりが始まる。
 発案者の里穂は、諒太さんとペアを組む。
 そうだよね、私のために今回のことを計画してくれたけど、里穂もカップル二人っきりでデートしたかったよね。
 里穂の気遣いを感じて、改めて感謝。
 じゃあ、私は椿ちゃんとペアを・・・。
 「十朱さん、じゃあ僕と組もっか」
 「はい」
 え、ええええええ!?
 あ、晶くんどういうこと!?
 普通、私と椿ちゃん、晶くんと魁吏くんで組む流れでしょ?
 どうしていきなり、晶くんと椿ちゃんが!?
 しかも、椿ちゃんもなんの迷いもなく頷いてるし。
 「ほら、女の子だけだと危ないから。ね?」
 あ、ああ、なるほど・・・?
 確かに、顔の良い男女二人で組めばナンパ防止になるししつこい逆ナンも防ぐことができる。
 一石二鳥だ。
 でも、それは双方の顔が良くて初めて成り立つ話。
 里穂と諒太さんのペア、椿ちゃんと晶くんのペアではそれが成り立つけど、私と魁吏くんのペアでは成り立たない。
 ナンパの防止はできても逆ナンの防止にはちっとも役に立たないと思う。
 だから、晶くんよりも女の子の扱いが苦手な魁吏くんが椿ちゃんと組むべきだと思うんだけど・・・。
 「絢花ちゃん」
 椿ちゃんが真剣な表情で私のことを見てくる。
 そしてゆっくり頷いた。
 ・・・そっか、これが二人の言ってた『協力』なんだ。
 私たちを二人にする作戦。
 情けない私のことを本当に考えてくれている。
 私も・・・覚悟を決めないといけないよね。
 「魁吏くん・・・。私とペアでも、良い?」
 「・・・・・・ん」
 魁吏くんは短く、それだけ。
 でも、ペアになってくれた。
 なってもいい、って思ってくれた。
 今は、その返事だけで十分。
 それから、話し合ってどの順番でここで待っているかが決定した。
 まず最初に里穂、諒太さんペア。
 次に椿ちゃんと晶くん。
 そして、最後に私と魁吏くんだ。
 里穂と諒太さんに見送られて、私たち四人はひとまず屋台の方まで一緒に戻ることになった。