いつもの朝だった。

有佳はあたたかい朝食を用意して「おはよう」と挨拶をする。


サラダとオムレツとベーコンがワンプレートに盛り付けられ、コンソメスープと焼きたてのトーストがテーブルに並んでいた。

「朝食ありがとう、もう食べられないと思っていた」

「離婚が成立するまでは賢也の妻にはかわらないので主婦の仕事はちゃんとします」

「うん」

「それから、私ね仕事をはじめているの。今は使用期間でパート扱いだけど、来月から正社員になるから帰りはおそくなるかも」

え?仕事?

「離婚しても自立できるように事務の仕事を始めたの。結婚する前は事務と経理をしていたから、それが役立ってる。ただ、土日がないから今日も明日も仕事に行くわね」

「ここのところ土日に出かけていたのは、仕事だったの?」

嬉しそうな有佳を見つめる。
いままで、有佳を独り占めしたくてこのマンションに閉じ込めてきたが、今、有佳はこの狭い世界から飛び出していってしまった。

「そう、あなたにも秘密があるように、私も秘密にしていたの。あと、気付いてるかも知れないけど書斎に鍵をつけたから、書斎にあった賢也のものは寝室のクローゼットにいれてあるから」


「わかったよ」
何も言えなかった



有佳は仕事に出かけていった。
いままで、休日は二人でドライブをしたりショッピングをしたり、旅行にも行った。
部屋に居るときは肩を寄せ合って映画やドラマを見たり、本を読んだりしていた。

いつかそんな日々が戻ってくるのだろうか・・・

その日をいつか迎えるために、することがある。