「じゃあ行ってくる。必ず病院に行ってくるんだよ」

「うん。わかった」

今朝の有佳は表情が硬いように思えた、不安があるのかも知れない。
きっと不安にさせているのはオレだ、もう絶対に裏切ったりしない。

席に着くと田中が話をかけてきた
「奥さんどうしてる?妊娠検査薬とか使ってみた?」
そう言われて、わざわざ病院に行かなくても結果を知る方法があったことに今気がついた。

「うあ、そうだった。検査薬を使えばよかったんだ」

「お前って、仕事はできるけど、そういうところは抜けてるんだな」

「うるせ、今日病院へ行ってくるって。連絡待ち」

田中はニッコリと笑って「うまくいくといいな」
そう言うと肩をポンと叩いて出て行った。


落ち着かない・・・
何件も大森さんから着信が入るが、それに関しては無視をしているが、有佳からかも知れないと思うとスマホが震える度確認をしないといけない。
大森さんは廊下ですれ違う事があるが、目を合わせることもしなかった。

ちらちらとスマホの画面をみていると、待ちに待った通知が入った。
着信の知らせる画面ですぐにでる。
「病院どうだった?」

「うん、それでね今日も残業?」

一瞬、息が止る。
有佳は残業と言ってオレが何をしていたのか知っている。
「いいや、残業はないよ。今日もこれからも残業はしないよ」

「そっか、よかった。賢也が帰ってきたら話をするね」

結局、答えはお預けだ。
「わかった、ゆっくり休んでいろよ」