ドリンクコーナーでコーヒーをドリップしていると田中がやってきた。
「そいうや、片桐の家って行ったこと無いよな、奥さんにも会ったことがないし」

「まぁそうかもな」

「今日の夜とか片桐の家に行ってもいいか?」

「なっ!なんで?」

「ほら、もうできてるぞ」というと、自動販売機から入れ立てのコーヒーを取り出し手渡される。
田中は自分もコインを入れてブラックのボタンを押した。

「だって、会ってみたいし、こういうのって勢いだろ?」

そこに斉藤もやってきて「もうできてるよ、オレも買うから早く取り出せ」というと田中はブラックコーヒーを取り出し一口飲む。
続いて斉藤はスマホを自販機にかざすとカフェオレのボタンを押した。
「なになに、何の話?」

「片桐の奥さんに会いたいって話し」

「まじ、オレも会ってみたい」

「いや・・・」
でも、最近なんとなく夜は気まずい事が多いし、二人に来てもらうのもいいかもしれない。

「有佳に聞いてみないと」

「「じゃあ、連絡しろよ」」
「「今」」

見事に二人の声はシンクロした。


「有佳が嫌だって言ったら無しだからな」

「「了解」」


何度目かのコールで有佳が電話にでた。


「有佳体調は?」

「大丈夫よ、どうしたの」

たしかに、声の感じはそれほど体調が悪いようには感じられない。
「実は同僚が今夜、家で飲みたいとかいいだして・・・嫌なら断るよ」

「平気だよ、何人来るの?」

「二人なんだけど、適当になにか買って帰るから」

「そんなことしたら、ダメ主婦確定になっちゃうでしょ、軽い食事とおつまみをつくっておくから大丈夫だよ」

かわいいな
「ありがとう有佳、大好きだよ」
と言って通話を切ったが田中と斉藤の前だったことを思い出した。

「あ~あ、オレも結婚したくなったかも」と斉藤が言うと
「そもそもお前は彼女がいないし、節操もないだろ!無理!」と田中が一刀両断した。

「でもなんで急に片桐の家に行くことになったんだ?」

田中がいきなりそんなことを言い出したことは確かに疑問だ
「確かに、なんでいきなり?」

「ていうか、片桐が奥さんを隠しすぎ」

「別にそんなこともないよ」