なかなか寝付けなかった。
有佳は結局、ベッドに戻ってこなかった。夫婦ならこんなこともあるのかも知れないが、浮気をしているという負い目がある分、不安になる。

ベッドルームからでるとキッチンからいい匂いがした、有佳が朝食を用意してくれている。


よかった・・・

「有佳、おはよう」

「おはよう、食事できてるよ」
いつもの柔らかい笑顔だ。

「今日もうまそうだね、顔を洗ってくるよ」


大丈夫、いつも通りだ。

休日は二人で出かけたり、家でまったりと過ごす、結婚して2年ずっとしてきたことだ。
漫画を原作とした有名アイドルが主演を務めている恋愛映画がテレビに再生されている。
「これ、有佳が見たかったやつだよね」
主人公がキスをするシーンで同じように有佳にしようとしたら「飲み物を持ってくるね」と言ってソファを立っていった。

いつもなら、腕の中にすっぽりと入りオレの愛撫を受け入れていくのに昨夜の事がしこりとなっていく。

テーブルの上に置いたスマホに恵美からのメッセージが入ったことの通知があり、慌てて裏返した。

しこりはすこしずつがん細胞に変っていく。
その前に・・・切除してしまわないと