それほど酒が好きなわけではないから飲み会にはほとんど参加することがなかった。
ただ今回は営業部に中途採用ではあるが新人が入ってきたことの歓迎会だったから参加せざるを得なかった。

営業部と総務部の合同になり、それなりに楽しんで飲んでいたがいつのまにか隣に総務部の大森さんが座っていた。
酔っているせいかやたらとボディタッチの多い人でさりげなくかわしていた。

二次会は参加するつもりがなかったので帰ろうとしたら4人が帰宅組と言うことで4人で駅に向かったが、2人は反対ホームということで大森さんと2人になった。



あの時、もっとしっかりしていれば


大森さんは小柄だが肉感的でいわば男好きのするタイプで、妻である有佳はスレンダーの美人で正反対だ。

「片桐くんって結婚してるんだっけ?」

「ええ、二年になります」

「少し落ち着いた感じ?」

「落ち着いた?」

「夜の話」

一体何を言い出すのかと思ったが、どうせ酔っぱらいの話だと適当に流そうと思ったが、中々にしつこい性格のようでペラペラと夜の生活について喋り出した。

恋人がタンパクだの、忙しくてなかなか会えなくて欲求不満だの、細かいことまで覚えていないが恋人について愚痴っていた。

電車の中はそこそこに混んでいて扉付近で向かい合わせに密着する形になった。

身長差の関係で向かい合わせになっていると顎の下に頭がくる形ですっぽりとハマっている為、これ以上密着しないように顔を上げて扉に両手をついた。

下半身に血が集まって行く感覚がして下を見ると大森さんがオレのモノをスラックスの上から触っていた。
最初は密着しているせいだと思おうとしたが、手の動きが明らかに攻略しようという意思があり巧妙でもある。
下は充分に反応してしまっているが、乗ってはいけない。
両手で扉を押して体を離そうと思っても大森さんはさらに体を密着させてスラックスのファスナーを下ろすと指を忍ばせてきた。

「次の駅で降りない?」

オレを誘って見上げる顔は欲情してギラギラとし、厚めの唇はしっとりと濡れていた。

この口でしてもらったら気持ちよさそうだ、どうせ大森さんも恋人がいて誘っているんだしこんなことは有佳にさせられない。
一度くらいなら・・・・


二人がいる側の扉が開いた

とっさに大森さんの腕を掴み、ホームに降り立った。