離婚が確定したわけではないので、主婦としての役割はきちんと果たそう。
もっとすんなり、離婚できると思っていた。

シーザーサラダにオムレツとベーコンをワンプレートに盛り付けていると賢也が起きてきた。
「おはよう」と声を掛けると気まずそうに「おはよう」と返してきた。

「食パンは何枚?」

「1枚」

「早く顔を洗ってきて」

「うん」

コンソメスープをカップに注ぎ、焼き上がったトーストを皿にのせたところで賢也がテーブルについた。

「朝食ありがとう、もう食べられないと思っていた」

「離婚が成立するまでは賢也の妻にはかわらないので主婦の仕事はちゃんとします」

「うん」

「それから、私ね仕事をはじめているの。今は試用期間でパート扱いだけど、来月から正社員になるから帰りはおそくなるかも」

スープを飲を飲んでいた賢也が硬直した。

「離婚しても自立できるように事務の仕事を始めたの。結婚する前は事務と経理をしていたから、それが役立ってる。ただ、土日がないから今日も明日も仕事に行くわね」

「ここのところ土日に出かけていたのは、仕事だったの?」

「そう、あなたにも秘密があるように、私も秘密にしていたの。あと、気付いてるかも知れないけど書斎に鍵をつけたから、書斎にあった賢也のものは寝室のクローゼットにいれてあるから」

「わかったよ」