ダイニングテーブルに報告書の入った封筒と椅子の上には朱肉と印鑑の入った箱。そして自分のところはすべて記入済みの離婚届。二つの音声データの入ったノートパソコンを置いた。




ピンポン
呼び鈴が一回だけ鳴って解錠する音がする。

帰宅の時の合図だ。

玄関に向うと優しい笑顔の賢也が靴を脱いでいた。
鞄を受け取りリビングに戻る。

「金曜日にこの時間に帰ってくるのって久しぶりだね」

「あ・・うん、そうだね。今までごめんね」

「そのごめんねは何に対して?」

「え?」

「ダイニングテーブルの方に座ってくれる?今、お茶をいれるね」

「いや、オレが淹れるよ。有佳は座っていて」

「ありがとう」と言って微笑んでみたが、本当に笑みになっているだろうか。



緊張して座っていると、賢也がマグカップにお茶を入れてもってきた。

「それで、どうだった?妊娠してた?」
今までに見たことの無いほどの明るい笑顔だった。


賢也は子供がすきだったんだろうか?

それなら大森恵美と作ればいい。