「焼きそば旨い、やっぱりソースは最強だな。ところで、どうかした?」

松崎は焼きそばを食べ終わりお茶をすすっていた。

「今夜、賢也が同僚を連れて来るんですって。今までそんなことなかったのに」

「感づかれたかな?あの女は自尊心が強いから、有佳ちゃんの容姿に圧倒されて旦那さんに何かを言うように思えないんだが」

「え?どういう意味?」

「音声では有佳ちゃんよりいい女だと思っている風な感じだが、実際にあった有佳ちゃんがモデル体型の美人だったことに自尊心が傷ついたんじゃないかと思ったんだ。大森恵美の価値はセックスだけじゃないかと気づいたんじゃないかってこと。しかも、離婚の話はでていないということも知ったし。というか、旦那さんが離婚する気がないことは薄々気付いているんじゃ無いかと思う。だから、有佳ちゃんが会社に乗り込んで来たことを言いたくないんじゃないかな」

「そういうものなんですかね?でも逆の立場でいきなり奥さんがやって来たらどうだろう?そういうことがないから想像がつかないけど」

「もし、旦那さんが愛人と別れて有佳ちゃんとやり直したいと言ったらどうする?」

「やり直すのは無理だと思う。だって、何かの拍子に思い出すし、帰りが遅い時は“またか”って思ってしまう。それ以前に、哀しいと思う反面冷めてしまっている自分がいるんです、賢也の言葉に何も感じなくなってしまったというかすべてが上辺だけの薄っぺらなものとしか感じられなくなったから」

「うん、そうか。それなら別れたらいつでも俺が受け止めるからね」
そいうと松崎さんはウィンクをする。こういう仕草が意外と似合う、この人はだれにでもこんな風に接するんだろうな、勘違いしないようにしないと。


「金曜日に話をしようと思う。もし、金曜日に“残業”をするなら彼女の部屋に突撃するのも悪くないけど、賢也をこれ以上幻滅したくない」



「今日中に書類を仕上げてしまおう」

「そうですね」