「おつかれさん」
外に出ると松崎さんが待っていてくれた。









どんなに自分では割り切ったと思っても、一つ一つの証拠が重しのようにのしかかってくる。
賢也とは顔を合わせるのも嫌で、夕食をテーブルにならべてからメモをのこしてソファアベッドに横になった。




もう泣く事は無いと思ったのに、あのビルから出た途端に涙が止らなかった。
二人で私を馬鹿にして嘲笑しながら身体をかさねていたんだろうか。
私はどうすれば良かったんだろう。

賢也はやさしい笑顔の裏で汚い言葉を私に投げかけていたんだろうか。

「誰を信じればいいんだろう」

「なら俺を信じればいい」

思わず声に出してしまった言葉に松崎さんが応えてくれた。

「俺を頼ってくれればいいよ」
そう言って抱きしめてくれた腕の中で枯れるほど泣いた。









「おはよう、大丈夫?」

「うん、本当にごめんなさいもう大丈夫だから気にしないで」

焼き鮭にほうれん草のごま和えに冷や奴と具だくさんのお味噌汁の朝食
賢也はおいしいと言ってすべて平らげてから仕事に向った。

心配する言葉も嘘、料理がおいしいという言葉も嘘、嘘、嘘、嘘


もう、一分も一秒も一緒に居られない。