「わたしに来客ってどこ?」

小柄な女性が三輪さんに対して高圧的な物言いをしている、自分が7㎝のヒールを履いているせいもあり、大森恵美は予想していたよりも小柄にみえる。


胸を張れ!

大森恵美の前では毅然とするように松崎さんに言われている。

私は一歩前にでると胸を張って少し大森恵美を見下ろしてから

「初めまして、大森恵美さんですね?わたしは、片桐賢也の妻の有佳といいます。少しあちらでお話をしていいですか?というより、聞きたいことがございますからあちらの席にいきましょう」

窓際にある席を指さした。
大森恵美の目がせわしなく動く。
手もすこし震えているようだった。

「もちろん、逃げませんよね?」

松崎さんが大森恵美は挑発すればするほどこちらの思うとおりに動くタイプかもしれない、だからどんどん挑発するといいよと教わっていた

「逃げるってどういう意味か知りませんが、失礼な人ですね」

精一杯の虚勢にみえる。
だから、私は胸を張って
「時間を無駄にしたくないの、早くあちらに行きましょう?」

わざと三輪さんに聞えるように言うと大森恵美は慌てた様子で私の前を歩いて行った。

本当だ、簡単にムキになる人なんだ。
なんだか、おかしくなってきた、ニヤつきそうな顔を必死に引き締めながらスマホをバックから取り出すとボイスメモの録音を開始して、大森恵美が先に座っている席の向いに腰をおろし、手に持ったスマホをさりげなくテーブルに置いた。