ゆっくりと湯船に浸かる。

賢也は彼女の部屋で過ごしている。
風呂から上がると、髪を丁寧に乾かしてから自室に入る。
とても眠れないがソファベッドに潜り込んで賢也が帰ってくるのを待った。

まだ仕事は終わっていない。
落ち着いて、大丈夫。これは仕事だと自分に言い聞かせる
そして、一人の女性の人生をやり直す為の仕事。

一人の女性、そう、私自身。

カチャリという鍵を開ける音と共にドアが開く音がした。
気を遣ってなるべく音がしないようにしているが、単に気まずいだけなのかも知れない。

浴室に入った音を聞いてからそっと部屋をでる。リビングに置いてあるバッグからGPSを抜き取りソファの上に置いていあるスラックスのベルトから盗聴器を取り外すと、部屋に戻った。
心臓が破裂しそうなほど緊張したが、無事に仕事はできた。

先週までは、賢也を試すために誘ったが、今日からは必要ない。



賢也は真っ黒だから。