「ごめん今日も残業なんだ、土日は有佳とゆっくり過ごしたいからさ、仕事を残したくないんだ。でももうすぐ残業しなくていいようにするから、先に寝ていていいからね」

賢也がニコニコと微笑み片手を挙げて出勤していった。

結婚して2年になる。
異性との交際は賢也が初めてで、それまで何人かには交際を申し込まれる事はあったが尻込みして一歩を踏み出すことが出来ずにいたが、紳士的な賢也には安心して身を任せることができた。

だから初めての人は賢也であり、賢也しか知らない。


二ヶ月前、会社の飲み会でひどく酔って帰ってきた。
普段、そんなになるまで酔ったりしないのでどうしたのかと思った。

多分その頃から毎週金曜日は残業と言って帰りが深夜になった。