夕食が終わってから有佳にすべてを話した。

「単身赴任という風に言われているが、オレは寮に入るらしいから、有佳だけ部屋を借りてくれればいいんだけど」

「仕事を始めたから無理だよ」

そうだよな、前だったら付いてきてくれたかも知れないが、今のオレに付いてきて欲しいとか言えないし、有佳だってオレのために何かをしたいとか思わないだろう。

「離婚はしたくないし、もちろん大森さんと結婚したいとかそういうことは全くないんだ。でも、このまま有佳と離れて暮らすのも嫌なんだ」

「そう・・・大森恵美さんと完全に別れてしまってもいいってこと?」

「もちろんだ、大森さんには恋愛感情は全くなかった。ただ体だけの関係だったんだ」

はぁ・・・

有佳のため息に今、自分が言った言葉が最低だと気付いたが大森さんに気持ちがあると思われたくなかった。

「ごめん、自分でも最低だと思ってる」

「賢也に覚悟があるのならいいわ。桑原部長の家は知ってる?」

「え?」

「桑原部長の家」

「何度かタクシーで送った事があるからわかるよ」

「ちょっと待っていて」というと有佳は部屋からバッグを持って出てきた。

「さぁいくわよ」

「えええ?部長のところ?」と焦るオレを置いて玄関に向った。


一緒に謝罪をしてくれると言うことなんだろうか・・・
自分のしでかしたことを有佳に尻拭いをさせるとか、情けないと思いながらも妻と別れる気が無いことをアピールできるかも知れない。


二人で車に乗るのは随分と久しぶりだ。
久しぶりに乗ったのが、不倫の後始末とは本当にバカだな・・・