「しゃちょ……陽太!」

あの日から、雨音は僕の名前をちゃんと呼んでくれるようになった。
愛する人から自分の名前を呼ばれることが、こんなに嬉しいなんて、僕は初めて知った。

「どうしたの?雨音」

僕が手を差し出すと、雨音はニコニコと満面の笑みを浮かべて、僕の手を取ってくれた。

「ううん。何でもない!」

と言いながら、雨音はぎゅっと僕の手をしっかり掴んでくる。
僕もその手を負けじと握り返す。

先ほど、もう1度雨音の両親へ挨拶に行った。
何発でも殴られる覚悟をしたが、今度はあっさりと受け入れてくれた。
理由を聞くと
「雨音が、とても幸せそうだから」
とのこと。
雨音のことを任せたいと、彼女の父親から言われた時、僕は本気で泣きそうになった。