こんな明るい時間に自分の部屋に戻ったのは、一体どれくらいぶりだろう。
まず、玄関前に置かれていた花に驚いた。
靴箱の中も、こんなに整えられていただろうか。
それに、1つまた扉を開けて、僕は驚いた。
家具自体は、確かに僕が買ったもの。
だけど配置が違う。
疲れて帰ったら、すぐに横になれるような位置にソファが置かれている。
それに、テレビや机も、前に比べてずっと僕が生活しやすい導線に置かれていた。
僕自身は、そういうことに気遣えない人間なのは自覚がある。
ということはやはり、これをしたのは……。

「社長、ここで休んでください」
「これ……雨音が……?」

雨音は、僕をソファに座らせながら、少し皮肉が入ったような笑みを浮かべて

「この模様替えをしたのは、1ヶ月前ですけどね」

と言った。
1ヶ月前、僕は何をしていただろう?
2ヶ月前は?
僕は自分の部屋の変化にすら気づかないどころか、自分が今日まで何をしてきたのか、まるで記憶にない。

それで気づいた。
その間、雨音は?
彼女は一体、何をしていた?
僕は、彼女と何か話をしただろうか?

僕は急いで雨音の方を見る。
雨音は、いつの間にか窓際にいた。
それから、慣れた手つきで少し開きにくい窓をスライドさせた。
さあっと、外の空気が入り込む。
空気は風となり、僕の頬に汗が垂れていることを教えてくれた。
雨音は再び僕を見る。
その表情は、あの日……

「嫌いになってもいいですか?」

と僕に告げた時と同じ顔をしていた。