雨音を大事にしたい。
幸せにしたい。
そのために、僕はずっと頑張ってきた。
彼女の一生を背負う覚悟もできている。
……その、つもりだった。
だけど、僕には雨音が何故あんなことを言ったのかが分からない。

「私なんかがあなたの妻になる資格はあるんですか?」

どうして、雨音は資格、という言葉を使ったのだろうか。
シャワーを浴びながら、僕は必死に雨音に言った。

「どうすれば、君を失わずに済む?君に安心を与えられる?」

それに対して、雨音は泣きじゃくりながら、こう言った。

「私が社長の邪魔になるかもしれないって……怖くて……。いつか……社長に……いらないって言われるんじゃないかっ……てっ……」

何故、雨音は僕が……いらないと言うと思ってしまったんだろう。
何故、そんなありえない誤解をしてしまったんだろう。

「僕は、君が考えるよりずっと……君を背負う覚悟は持ってるよ」

これも、僕の本心。

「君が苦しいと言うのなら、僕は君の苦しみに寄り添いたい。君の笑顔を、僕が作りたい」

これもだ。
全てが、偽りなく、自然と彼女の顔を見ているだけで出てきた言葉。
そして、雨音は、僕の言葉に対して、確かに泣きながら頷いてくれた。

「私も……社長の側にいたい……社長が欲しいです……こんな私でも良いんですか?」

と、嬉しい言葉を言ってくれた。
それでも。
雨音と僕は、あの日から正式に一緒に生活を始めることにしたけれど。
これから、結婚に向けての準備を始めるけれど。
……雨音の、心の奥底が僕には見えてこない。