「まぁでも、愚痴だとか弱音を吐く時間は基本的には無駄だとしか思えないし、よほど理不尽な態度をとられたときくらいにしか口には出さないかもしれない。ぐちぐち言うよりは、早々に見限る方が合理的だ」
淡々と言われ「そうですよね」と同調したけれど、私は愚痴を吐いてストレス発散するタイプなので内心だらだらと冷や汗をかいていた。
私と会うイコール無駄な時間だとは絶対に思われたくない。
間違っても上条さんの前で愚痴や弱音を吐かないように気を付けないとダメだ。
後藤相手に部長に言われた嫌味をつらつらと言っている場合じゃない。
「あの、どの立場から言ってるんだって気分を悪くしないでほしいんですけど」という私の前置きに、上条さんは少し笑った。
「いちいちそんなこと思わないから言え」
「対人関係とかとても大変だなって思うのに、愚痴を吐かないで見限るとか、立派だなって思うんです。私だったら感情が入ってきちゃいそうだから、上条さんは理性的ですごくしっかりしてるなって」
「ビジネスパートナーとしか見ていない相手だ。普通はよほどじゃなければ感情的にはならないだろ」
「それでも、ムッとしたりそれを引きずっちゃったりってあると思うんです。でも、上条さんは割り切ってる。それに、私のお守りを大事にしている気持ちにも理解を示してくれて、優しい面もある。すごくきちんとした大人だなって思うんです」
じっと上条さんを見ながら続けた。



