「いい加減にしてもらえませんかね。この試食会については極力情報を出していない。にもかかわらず、どこから聞きつけたんですか?」
「試食会?」
「周りを嗅ぎまわられるのは気分が悪いですし、こんなところまで図々しく来られても困るんですよ。これ以上社長に付きまとうようなら、こちらとしても警察や弁護士に相談することになりますが……それだとあなたも困るんじゃないですか? 一応、働いているんでしょう? 会社にいられなくなりますよ」
眉間にシワを寄せて、本当にうんざりした顔で言われる。
試食会だとか社長だとか、ついでに言えば警察や弁護士なんて単語を出され、混乱しながらも口を開く。
「あの、よくわからないんですが恐らく誤解です。私はただ、ここにくるようにって言われて……それだけなので。その、ふわふわした説明しかできずに申し訳ないんですけど、本当に付きまとっているわけじゃないですし……」
「ストーカーはみんなそう言うんです。まぁ、適当に手を出した社長も悪いですが、遊びと本気の違いくらい、あなたもいい大人なんだからわかるでしょう? それに誰彼構わずそんな関係になるあなたにも否はある。一時の夢だったとでも思って諦めて……」
どんどん言ってくる男性に、我慢できなくなり「だから、違うって言ってるじゃないですか」と言い返す。
あまりに聞き入れてもらえないのでイライラし始めていた。



