高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「同じご利益があるとは限らないが、一応な」

紙袋の中には、白地に金色の刺繍で〝御守〟と書かれたお守りが入っていた。
抹茶色と朱色で梅のような花も刺繍されており、可愛らしい色合いをしている。

手のひらにそれを載せたまま見上げた私に、上条さんはぶっきらぼうに言う。

「前も言ったが、俺が踏んだせいでおまえの運気が下がったら後味が悪い。この神社が何に特化しているかは知らないから、このお守りを持ってたのに何か不運があったとしても保証はできないからな」

そんなことを言う上条さんに、呆然としてからクスクスと笑った。

「ありがとうございます。嬉しいです。絶対に大事にします」

ほんの十メートルほど先ではお祭りが催されていて人だってたくさんいるのに、ここはふたりきりで、周りを木に囲われているせいか空気も少し冷えていて不思議な空間だった。

上条さんが私のためにとお守りを授かってきてくれたことが嬉しくて笑顔でお礼を言う。
そんな私をじっと見ていた上条さんだったけれど、そのうちに一歩近づいた彼に腰を抱き寄せられた。

上条さんの肩にぶつかりそうになり、咄嗟に顔をあげると、そのまま腰を折った上条さんが唇を寄せてくるので、息をのんだ。

神社の一角。
顔を傾けた上条さんの唇があと数センチで触れるところで彼の胸を手で押す。

突然のことに心臓がドキドキ騒ぐせいで、指の先が震えていた。