「素直にもほどがある。まだ二度会っただけの俺相手にそこまで気持ちをさらけ出すのは感心しない。おまえの気持ちを知った俺が、いいように利用するとは考えないのか?」
穏やかな落ち着いた声で問われ、少し考える。
〝利用〟という単語に少し胸がざわつくのを感じ、そんな不穏な気配を振り落とすように緩く首を振った。
「利用されたら悲しいですけど……それでも、自分の気持ちに素直でいた方が私は楽なんです。自分の気持ちを飲み込むのはあとで苦しくなるから嫌ですし」
私にとっては、これが後々傷つかないための保険だ。
恋愛する上で駆け引きが必要な局面があるのは知っているし、私だってできるならそんなふうに楽しんでみたいとも思う。
〝今のはどういう意味?〟とか聞かれて〝さぁ? どういう意味だと思う?〟なんて、含みのある笑みで返してみたい。
けれど、性格上、そして経験上、自分の気持ちを押し込めたままでいるのが一番ツラいと知っているので、それは無理だった。
残念ながら〝今のはこういう心境からこんな意味で言った〟と高らかに宣言するのが私だ。



