……と、私みたいな事務員でも毎日それなりにトラブルがあって慌ただしく一日が終わるので、これが営業部門だとか企画推進部門となると、お客様と直接のやりとりも発生する分、相当忙しい日々を送っていると想像できて、考えるだけで気が重たくなる……というのに。
同期で営業部門に配属されている後藤は、入社してからこのかた疲れた顔ひとつ見せないのだからすごい。
それどころか「仕事? いや、俺は普通に楽しいけど」なんてケロッとした顔で言うので、もう天職なんだろう。
この一年半常にトップの営業成績がそれを証拠づけていた。
そんな後藤とは最初の同期会で隣の席になったことから話すようになり、今は同期の中で一番仲がいい。
本社に配属された同期は八人いるけれど、一カ月に何度も飲んだり食べたりしているのは後藤だけだ。
異性という点で、あまり頻繁にふたりきりで会うのはちょっとな……とも考えた時期もあったものの、それも最初のうちだけだった。
今は何でも話せるいい友達だ。
部長の愚痴が終わったあと、上条さんとのことや、そして秘書の緑川さんとのひと悶着を報告すると、後藤は嬉々とした表情を浮かべた。
ちなみに水出さんとの件に関してはここ二カ月常に相談状態だ。
「へぇ、やるじゃん。ムカつく秘書相手に徹底抗戦の構え見せて帰ってくるとかカッコいいな」
駅近くの居酒屋のカウンター席。
ビールを飲みながら呑気に笑う後藤に口を尖らせる。



