高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「成人女性が男にホイホイついて行って関係を持って、それが胸を張って言えることだとでも考えてるんですか? 頭の中お花畑ですか?」
「私の貞操観念がどうだろうと緑川さんには関係ないし、責められるのはおかしいって言ってるんです。それに、言い訳みたいに聞こえるかもしれませんが、そもそも私は身持ちがものすっごく固いですから。もちろん、出逢ってすぐにこういう関係になったのは初めてですし、上条さんも納得の上であんな……」

煽られるまま勢いよく言い返していたけれど、言葉がピタッと止まる。
それは、昨夜の上条さんとの情事を思い出したからで……頬がじわじわと熱を持って行くのを感じた。

お酒が入っても涼しい顔をしていた上条さんが、ベッドではあんなに色っぽくなるなんて思いもしなかった。

私に向けられる眼差しに乗った熱も、息遣いも、指先の感覚も。私の体だけじゃなく、この部屋の雰囲気までもが上条さんの色に染めあげられたようだった。

呼吸するごとにその存在感を甘く教えつけられ、期待から体温が上がり、どうしようもない快感に襲われる。

私の反応を楽しむように口の端を上げた上条さんの色気は、目に毒なほどだった。

昨夜の一連の情事を思い出して何も言えなくなった私に、不思議そうに片眉を上げた緑川さんが「あんな?」と先をうながす。

なので、きっと赤くなっている頬を両手で覆いながら目を伏せた。