高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「恋愛に関しては俺も偉そうなことは言えないですけど、それでもやっちゃいけないことってあると思うんですよね。高坂みたいに真っ直ぐなやつに軽い気持ちで手を出すべきじゃない。何回かふたりで会ったあと、高坂が過去の恋愛について話してきたときは結構苛立ちました」

後藤は「ああ、友達の域からは出ない範囲でですから」と一応のフォローを入れ続けた。

「ふたりで飲んでも、本当に恋愛的な雰囲気は皆無だし、俺に話し相手以上のなにも望まない。気付いたら、完全に安心しきられてて……高坂、素直だし、性格は普通に可愛いでしょ。だから俺も懐かれて嬉しく感じ始めて、いつの間にか、変な気も張らずにただその場でくだらない話をするのが楽しいと思うようになってました」

後藤が、椅子の背もたれに片方の腕をかけ、体ごと俺の方を向く。

「お互い、恋愛面に問題があったし、もしかしたらずっと決まった相手いないのかもなぁって、そしたら結婚してもまぁいっかって思ってたってわけです。あいつの隣は悪くないかもなって。まさか、突如現れた王子様が横からかっさらっていくとは思ってもみませんでしたけど」

苦笑いで言われる。

「好きな男ができたって上条さんの話をする高坂は、俺が知らない顔をしてた。三年間、あれだけふたりで飲んでたのに、俺には見せなかった顔でした。……まぁ、だから諦めもつきましたけどね」

どこまで本気かわからない笑みを探るように凝視しても、後藤の仮面ははがれなかった。

軽薄そうな笑顔にひとつ息をついてから口を開く。