高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「初めての同期での飲み会の時、高坂とは隣の席だったんですよ。で、俺はその頃絶賛モテ期中で、好んでもいない真面目な子からも好かれまくって、なのに勝手に幻滅されて挙句〝軽い、最低〟って罵倒されるっていう、わけのわからない状態が続いてうんざりしてたんです」

後藤が椅子の背もたれに体重を預け、天井を見る。

「高坂も真面目そうだったから、釘刺しておこうと思ったんです。〝俺、高坂のこと、絶対恋愛対象として見られないけど同期として仲良くしような〟って、そんなようなことを言いました。まぁ、牽制っていうか。冗談交じりですけどね。そしたらあいつ、俺に対して〝うぬぼれるな〟とか言うわけでもなく、安心した顔してました」

正直、拍子抜けしたと笑った後藤が続ける。

「俺からしたら、面倒くさい恋愛したくないからっていう保身の言葉でしかなくて、下手したら高坂を傷つけるかもしれなかったのに、あいつはむしろホッとした顔して……その日から懐かれ始めたんですけど、相手をしていく中でなんとなく高坂が抱える傷に気付きました」

後藤の話を聞いていて、いつだったか美波が言っていた言葉が蘇る。

『私が上手に励ませたらよかったんですけど……どうしても異性じゃなきゃダメなときってあったりして』

落ち込んだ佐々岡さんを元気づけたいと考えた美波が、俺に他の男を紹介して欲しいと電話をかけてきたときだ。

美波にもそういうときがあったとしたら、男に触れられるのが怖い美波は、自分を異性として見ない後藤を頼りにしていたのかもしれない。