高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「すみません。身勝手っていうのは、初期の頃に高坂から話を聞いたときの、ただの俺のイメージだったみたいです」

明らかに喧嘩を売っている態度だった。
けれど、そうされる理由がわからずにただ見ていると、後藤は苦笑いをもらした。

「そんな怖い顔しないでくださいよ。未来の嫁さん奪われたんだから、ちょっとくらい意地の悪い態度とっても許されるでしょ」
「……どういう意味だ?」
「まぁ、俺が勝手に思ってただけですけどね。三十歳くらいになっても、俺も高坂も決まった相手がいなかったら、その時は結婚するのもいいかもなぁ、なんて」

目を伏せ笑みを浮かべた後藤が続ける。

「上条さんって、男女の友情はありえるって信じてるタイプですか?」
「自分は信じていないような言い方だな」
「ですね。だってありえないでしょ。別の生き物ですもん。問答無用で密室に一カ月も閉じ込めておけば、友情なんて言ってられなくなると思うんですよね」

俺自身、男女間の友情についてはありえないと思っているため、異論はない。
けれど後藤の言葉が引っかかったのは、美波が理由だった。

「美波は、おまえのことを友達だと思っているようだったが」

同期として三年の付き合いがあり、その間、何十回もふたりきりで会っているはずだ。

美波がこいつにはなんでも話すことから、後藤は美波が信頼するに値するような態度をとってきたのは明確だった。

後藤は、呆れたように笑った。