「ああいうものには、世間一般的な価値は当てはまらないだろ。あれだけボロボロになるほど常に持ち歩いていたのを見れば、おまえにとっては相当大事なものだったということは俺にもわかる。最初から状態が悪かったにしても、最終的に壊したのは俺だからな。悪かった」
正面から謝ってくれる上条さんに、胸が内側から突き動かされる。
ドクンと一度大きくなった心臓が、体を震わせるようだった。
大事なお守りだった。
私にとってはかけがえのない、本当の意味でのお守り。
家族ですら〝いつまでも持っていないでいい加減供養しなさい。そんな古いものより新しい方がいいでしょう〟と顔をしかめるのに、上条さんはそうじゃなくて……。
私の気持ちに寄り添ってくれているのがわかり、目の奥がじわっと熱を持つ。
嬉しくて、唇をかみしめた。
「大学入試のときに、祖母が渡してくれたんです。〝美波を守ってくれるようにうんとお願いしておいたから〟って。大学の合格発表を待たずに祖母は他界してしまって……そのまま供養しそびれてたんです。……ううん。きっと私が手元に置いておきたかったんです。祖母が私に最後に残してくれたものだから」
微笑んで続ける。



