「ああ、ごめんね。この人、今から彼女と待ち合わせなんだよ。君たちみたいな可愛い子と飲んでたら怒られちゃうから遠慮してくれる? すごく残念だけど、ごめんね。顔は覚えたから、今度見かけたらこっちから声かけるよ」
後藤が苦笑いで言う。
口調こそ柔らかいが、有無を言わせない態度が場慣れしていると語っていた。
体よく女性を追い払った後藤は、なぜか俺の隣の椅子を引き笑顔を向けてくる。
「高坂のお迎えですか? だったら声かければいいのに。あいつ、上条さんが来たって知ればすぐ抜けるでしょ」
美波のことを『あいつ』と馴れ馴れしく呼んだことにわずかな怒りを感じつつも、それは表には出さずに答える。
「じきに終わるなら、途中で抜けさせる必要もない」
「あれ。案外優しいんですね。高坂から聞いている限りだと、もっと身勝手かと思ってました」
仲良く並んで話す気もないが、普段、美波が後藤にどんな風に言っているのかが気になった。
「美波は、俺のことをなんて?」
「まず見た目がカッコいいっていうのは耳タコですね。あとは、声に艶があって色っぽいだとか、いちいち行動がスマートだとか、結構細かいところまで気が回るとか……あれ。褒めてばっかだな」
宙に視線を向けわざとらしく不思議そうな顔をした後藤が、俺を見て口の端を上げる。



