高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「うーん。なにも気付いていない感じだったかな。コンプライアンスから呼び出されて、初めて自分がしていた言動が問題だったってわかったみたいだった。そのまま謹慎に入っちゃったから、反省してるのかどうかはわからないけど……たぶん、〝おおげさに言いつけやがって〟くらいに思ってるんじゃないかな」
「本当にありえないよね。もう二度目だし、懲戒免職にしちゃえばいいのにね。美波のことネチネチいじめておきながら、退職金普通にもらって辞めていくとか、考えるとはらわた煮えくり返りそう」

パワハラをしていた部長に関しては、美波から話は聞いていた。
俺がなんでも話すようにと言ってからは、美波はポツポツ社内での出来事を口にするようになった。

悩みというものではなく、単純にその日にあったことだとかが多く、はっきり言えばとりとめのない話だが、聞いていて退屈もしないのでこのままでいいと思っている。

件の部長について報告を受けたのはすべてが終わった後だったため、もっと早く言えということと、そういう被害は早々に上に報告すべきだという注意に終わった。

美波は人が良すぎるし、そういう面ではタフなため、自分だけが被害を受けている状態ならそのままスルーしそうな気配がある。

なので、『そこまでやられっぱなしでもなかったので、いいかなって思って。すみません』とヘラッと笑った美波がしっかり俺の言う意味を理解したのかは疑問が残ったが、ああして意見してくれる同僚がいることに少なからず安堵していた。