高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「おまえを責めたいわけじゃない。ただ、無意識にそういう考えもあったんじゃないかと思っただけだ。だからまぁ、俺はラッキーだったんだろうな」
「ラッキー……?」
「誰でもよかったのに、おまえに選ばれたんだから。あの駅前で出逢う可能性なんてごくわずかだ。それなのに、そこから始まって今こうしているんだから、ついていたって以外、言いようがない」

まず『ラッキー』だとか『ついてた』だとか、子どもみたいなことを言う上条さんに母性本能がキュンとして、それから言葉の意味について考える。

たしかに、ああして出逢えたことは奇跡だし、そこから上条さんとの関係が続いているのもそうだろう。

だから上条さんの言っていることはわかるのだけれど……ひとつ引っかかり、苦笑いを浮かべた。

「私は、誰でもよかったわけじゃないです」

わからなそうに片眉を上げる上条さんの言いたいことはわかる。
出逢ったその日に関係を持っている以上、私がいくら主張したところで説得力にかけることも。

でも、誰でもよかったわけじゃないのだ。

目を見て話して、考え方を知って、声のトーンだとか間の取り方だとか、向けられる表情だとか。そういうもの全部が心地よくてしっくりきたからだ。

誰が相手でも、〝いいなぁ〟とか〝もっと一緒にいたい〟と思うわけじゃない。
そう説明してから続けた。