高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「だいたい、おまえが真っ先に俺のところにきておけば、そもそもの発端となった浮気男にも戸川にも傷つけられることはなかったんだ」

元カレと出逢う前にという意味で言っているなら、それは無理な話だ。
だってその頃はまだ上条さんと私だって出逢ってすらいない。

だから上条さんが言っているのは到底無理な話で、私が責められるいわれはない。
言いがかりもいいところだ。
……それでも。

「これまでおまえが俺以外の男を真っすぐに想い好きだと繰り返し言っていたのだと考えると腹が立つ」

私の過去にまで嫉妬してくれている上条さんを知れば、文句なんて出てこない。

「ん……」

再び唇を塞がれる。深くなったキスに応えていると、そのうちに上条さんの手が服の裾から入り込んでくる。

上条さんの手を少し冷たく思うのは、まだ微熱が残っているからなのか、それともキスで体が熱を帯びたのか、もうわからなかった。

行為の途中、なんとか残っていた理性で〝風邪が移るから〟と停止を求めたけれど、上条さんは聞く耳持たずだった。

ずっとキスを交わしながらの行為はまるで溺れているようで、体に与えられる快感も相まって、次第に思考回路が溶けぼやけだし――。